ハルシオン

うつ病になって数年、とても苦しい日がたくさんありますが、少しずつ良くなっています。
僕がどういう経緯で発症したか、症状の経過やその時の心情などを小説形式で綴っていきたいと思います。尚多少のフィクションは入っていますが、感じた気持ちなどはノンフィクションです。

ハルシオン4

本当に急に。(心にぽっかり穴が開く)
この言い回しは適切ではないかもしれないが、こんな感じだった。
何かが足りない。
映画もドラマも読書も。まったく興味がなくなってしまった。
それらを楽しむ心がふっと抜け落ちてしまったような、そんな感覚だった。
僕はうまく笑えなくなった。


九月になると学校が始まった。受験生である僕たち高校三年生は午前中の四時間で授業が終わる。たいていの人がそこから自習や予備校へ行くのだ。
僕だってそうだった。少し前までは。
もう限界だった。
朝の7時に起きること自体僕にはとても大変だった。
休みの間に定着した昼夜逆転。
一睡もせずに学校へ通う日が続いた。
学校へ行くための満員電車、20分続く通学路。
クラスメイトの笑い声。先生たちの授業。窓から差し込む日光。
僕の中の何かが、パンクしてしまいそうな気がした。
ふらふらになりながら僕は担任に相談した。
「最近全然眠れなくて、今日も眠れなかったし。だから疲れがたまっちゃうというか、集中力が下がっちゃって、ちょっとまいっちゃってます。」


「だったら寝ずに勉強すればいいんじゃないか?そうだろう?ちょっと寝なくたって死なないんだから。」
そうか。確かに、現に僕はここ数日眠れていないけど、生きているじゃないか。
どこか他人事に思えてきた。笑いが込み上げてきた。少し悲しかった。でも
「そうですね。そうします。」
僕は笑った。


10月に入るといよいよ体がもたなくなった。
適当に母に言い訳して学校を休みがちになった。
「ちょっと熱があるんだ。吐き気もする。だから今日は、」
毎日だった。一日中ベッドの上で目をつぶっているだけの日々が続いた。
本当に何もしなかった。何をする気も起きなかった。
母がこんな僕をよく思っていないことだってわかっていた。
「いいかげんにしたら?こんなに毎日学校休んで。勉強するわけでもなく、何をするわけでもなく。月謝の無駄だし。いつまでそんなに怠けてるの。」